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東京高等裁判所 昭和56年(ネ)1406号 判決

控訴人

源九長松

右訴訟代理人

山田俊昭

被控訴人

鈴木信行

右訴訟代理人

塙悟

主文

一  原判決を次のとおり変更する。

1  被控訴人は、控訴人から金五九〇万円の支払いを受けるのと引き換えに、控訴人に対し、別紙物件目録記載の店舗を明け渡し、かつ、昭和五四年九月七日から同五七年二月末日までは一か月金九万四、〇〇〇円、同年三月一日から右明渡しずみまでは一か月金一一万二、〇〇〇円の各割合による金員を支払え。

2  被控訴人の主位的請求及び予備的請求中その余の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は第一、第二審を通じてこれを三分し、その一を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。

三  この判決は、控訴人が金五〇〇万円の担保を供するときは、第一項1に限り、仮に執行することができる。

事実

一  求める裁判

(控訴人)

1  原判決を取り消す。

2  (主位的請求)

被控訴人は控訴人に対し、別紙物件目録記載の店舗(以下「本件店舗」という。)を明け渡し、かつ、昭和五四年九月一日から同五七年二月末日までは一か月金九万四、〇〇〇円、同年三月一日から右明渡しずみまでは一か月金一一万二、〇〇〇円の各割合による金員を支払え。

3  (予備的請求)

被控訴人は、控訴人から金五九〇万円の支払いを受けるのと引き換えに、控訴人に対し本件店舗を明け渡し、かつ、昭和五四年九月一日から同五七年二月末日までは一か月金九万四、〇〇〇円、同年三月一日から右明渡しずみまでは一か月金一一万二、〇〇〇円の各割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は第一、第二審を通じて被控訴人の負担とする。

との判断並びに仮執行の宣言。

(被控訴人)

控訴棄却の判決。

二  主張

次に付加・訂正するほかは、原判決事実欄の「第二 当事者の主張」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二丁表五行目の「その所有にかかる」から同七行目の「〇日、」までを「昭和三八年九月一〇日、被控訴人に対しその所有にかかる本件店舗を」と改め、同八行目の「必要性」のあとに「を挙げての更新拒絶」と付け加える。

2  同二丁裏六行目の「本件店舗に」から同七行目の「していない。」までを「被控訴人が店に出て仕事をしたのは和解が成立した当初だけで、その後は本件店舗にほとんど姿をみせず、とくに昭和五四年頃から今日に至るまで全く姿を見せず、営業もしていない。被控訴人が本件店舗で営まれている八百屋の営業主であるというのは名ばかりで、」と、同三丁表二行目の「右のように」から同三行目末尾までを「前記和解の内容として、被控訴人は本件店舗を転貸し、又は賃借権を譲渡してはならないとされ、これに違反したときは、直ちに本件店舗を明け渡す旨が約されているにもかかわらず、右のように被控訴人は鉄美に本件店舗を転貸し又は賃借権を譲渡しており、賃貸借契約に違反しているのであるから、」とそれぞれ改める。

3  同三丁裏八行目の「金一〇〇万円」とあるのを「本件店舗の借家権価格に相当する金五九〇万円」と改め、右八行目のあとに行を替えて、

「6 当審における鑑定人の鑑定の結果によると、本件店舗の賃料相当額は昭和五四年八月一日現在で一か月金九万四、〇〇〇円、昭和五七年三月一日現在で一か月一一万二、〇〇〇円である。」

と付け加える。

4  同三丁裏九行目冒頭から同四丁表三行目末尾までを次のとおり改める。

「7 よつて、控訴人は被控訴人に対し、右転貸又は賃借権の譲渡による賃貸借契約の解除若しくは更新拒絶による賃貸借の終了に伴う原状回復として、主位的には無条件で、予備的には控訴人から金五九〇万円の支払いを受けるのと引き換えに、本件店舗を明け渡し、かつ、昭和五四年九月一日から同五七年二月末日までは一か月金九万四、〇〇〇円、同年三月一日から右明渡しずみまでは一か月金一一万二、〇〇〇円の各割合による賃料相当の使用損害金の支払いを求める。」

5  同四丁表九行目の「本件店舗」のあとに「のある建物」と付け加え、同裏二行目の「訴外」を削り、同三行目に「本件建物」とあるのを「本件店舗のある建物」と改め、同七行目の「鉄美らが」のあとに「あとを引き継いで」と付け加える。

6  同五丁表五行目冒頭から同六行目の「認める。」までを削る。

7  同五丁裏六行目のあとに行を替えて、

「4 同第4項の事実中、控訴人主張の更新拒絶の申入れがあつたことは認める。

5 同第5項中、控訴人主張の金額が正当の事由を補強するに十分なものであることは争う。右金額は借家権価格のみであつて、本件店舗を明け渡すことにより営業の廃止を余儀なくされ、そのために失われる営業による利益に対する補償が含まれていない。」

と付け加える。

8  同五丁裏七行目冒頭から同八行目の「認める。」までを

「三 控訴人の認否及び反論

控訴人が本件店舗のある建物の二階部分を印刷業者に賃貸したことは認める。」

と、同六丁表二行目に「を認めるも」とあるのを「は認め、」と、同じ行に「主張事実を」とあるのを「主張事実は」とそれぞれ改める。

三  証拠〈省略〉

理由

一まず、主位的請求について判断する。

請求原因第1項の事実は当事者間に争いがなく(もつとも、被控訴人は、当事者間において本件店舗の賃貸借関係が生じたのは昭和二九年からであると主張するが、その事情は次に認定するとおりであるのみならず、たとえ被控訴人主張の事実が認められても、当事者間の法的地位に何らの消長を生ずるものではない。)、この事実に、〈証拠〉を総合すれば、次の事実が認められる

1  本件店舗のある別紙物件目録記載の建物(源九ビル)は食品、衣料、雑貨等の商店が立ち並ぶ通称「中野商店街」の一画にあり、もと、その敷地上には同じく控訴人所有の木造建物が存していた。被控訴人の父初五郎は今次大戦後の昭和二五、六年頃から右商店街にリヤカーで野菜類を運んできて、右木造建物の前付近の道端で商いをしていたが、雨降りの日などに露店で商いをするのを気の毒に思った控訴人において右木造建物の軒先を使用するように勧め、それ以来、初五郎はここを無償で使わせて貰い、家族の手伝いを受け商いを続けていた。

2  こうして、一〇余年が経過した昭和三八年九月、右木造建物が取り壊わされ、そのあとに本件店舗のある前記建物が築造されたのであるが、これに先立ち、控訴人は初五郎に対し、建物が完成したときは、その一階店舗部分の一部(本件店舗)を賃貸することを条件として建築資金の一部を拠出してほしい旨を要請し、初五郎はこれを受け容れ、そのころ金一〇〇万円を出捐した。ところが、建物が完成し、賃貸借契約を締結する段になつて、初五郎は控訴人に対し、自分も齢をとつてきたし、次男である被控訴人の身持ちが定まらないので、この際、いつそ被控訴人に店の営業を委せ責任を持たせれば、商売にも身を入れるようになると思うので、店舗は被控訴人の名義で借り受けたい旨を申し入れ、控訴人もこれを承諾した。その結果、前記のとおり、本件店舗の賃貸借契約は、昭和三八年九月一〇日、控訴入(賃貸人)と被控訴人(賃借人)との間で、貸借期間を向う一〇か年間として取り結ばれ、被控訴人は、初五郎はじめ家人の協力、援助を受けてここで八百屋を営むようになつた。

3  ところで、初五郎には被控訴人のほかに、もう一人の息子・長男鉄美がいるが、右賃貸借の当時、鉄美は、現在の妻由紀子との結婚を両親に反対され、いわば勘当同然の状態で家を出て、他所で暮らしていた。そして、その後、許されて家に戻つたが、別に定職もなかつたので、妻の由紀子とともに被控訴人の店を手伝うようになつた。そうするうち、被控訴人は、元来、自律神経失調、甲状腺機能障害等の持病があり健康が優れないこともあつて、勤労の意欲に欠けていたことから、事実上、店の営業の主導権は次第に鉄美に移つていき、遂には店の営業は鉄美夫婦が中心となつて行ない、被控訴人はこれを手伝うという状態になつた。

4  そうするうち、一〇か年間の貸借期間が経過し、控訴人と被控訴人との間で、その更新の条件について話し合われたが、合意が成立するにいたらなかつたため、前記のとおり、控訴人は被控訴人を相手方として、中野簡易裁判所に期間満了に伴う自己使用の必要を理由とする更新拒絶並びに無断転貸及び善管義務違反による契約解除を理由に本件店舗明渡請求の訴えを提起した。そして、その訴訟の係属中に前記のような和解が成立し、訴訟は終了した。ところで、控訴人は、以前初五郎から鉄美の身持ちが悪い旨を聞かされたことがあり、その物腰・態度にも被控訴人とは違つて粗暴さが感じられ、現に貸借更新の条件について話し合われた際にも、鉄美がその席上で暴言を吐いたりしたため、鉄美に対して好感を持つておらず、鉄美が本件店舗で営業することに不安を抱いていたところから、右和解成立の際には、とくに控訴人の方から要求して和解調書中に転貸又は賃借権の譲渡を禁止する旨の条項を掲げることとした。このような経緯もあつて、被控訴人は、和解成立後しばらくの間は、店に出て熱心に八百屋の仕事に従事していたが、そのうち、店にもほとんど姿を見せなくなり、本訴が提起された昭和五四年一〇月一七日当時には、再び本件店舗での営業は、鉄美の収支計算のもとに、鉄美夫婦によつて行なわれるという状態が現出していた。

以上の事実が認められ〈る。〉

右事実によれば、被控訴人は、控訴人から本件店舗を賃借したのち、ここで八百屋を営んでいたが、事実上、その営業の主導権は次第に鉄美に移り、本訴が提起された昭和五四年一〇月一七日の時点では、右営業は、鉄美の収支計算のもとに、鉄美夫婦によつて行なわれ、店には被控訴人の姿はほとんど見かけられない状態にあつたのであるから、右の時点では本件店舗も鉄美が右営業のために使用し、被控訴人がこれを使用している状況にはなかつたということができる。そうすると、被控訴人は、本件店舗での営業の主導権が鉄美に移転するに伴い、その時期は明らかではないにしても遅くも本訴提起の時点においては、事実上、本件店舗の支配を鉄美のもとに移し、同人をしてこれを使用させ(一種の転貸)ていたというべきであるところ、控訴人が被控訴人に対し、このことを理由に昭和五四年一〇月二五日到達の本訴状をもつて被控訴人との間の前記賃貸借契約を解除する旨の意思表示をしたことは記録上明らかである。

しかしながら、本件店舗については、元来、初五郎が控訴人からこれを賃借し、ここで従前からの八百屋の営業を行なう筈であつたところ、前記のような事情から初五郎において被控訴人に右営業を委せ、そのため本件店舗も被控訴人の名義で賃借したものであることは前認定のとおりであり、前認定のように鉄美は初五郎の長男であり、鉄美が被控訴人に代つて右営業を行なうようになつたとしても、それは父親が行なつていたいわば家業としての八百屋の営業を長男である鉄美が承継したのと実質的に変りはなく、前認定の事実に照らせば、これが初五郎の意思に反することともみられない。また、控訴人が鉄美に対して抱いている個人的感情を別にすれば、本件店舗での八百屋の営業が被控訴人によつて行なわれるか、鉄美によつて行なわれるかによつて控訴人の利害に重大な影響があるものとは考えられない。

以上の諸事情を合せ考えると、前認定のような経過のもとに被控訴人が八百屋の営業のために鉄美をして本件店舗を使用させたことについては、賃貸人である控訴人との間の信頼関係を破壊するに足りない特段の事情があるというべく、したがつて、控訴人の前記賃貸借契約解除の意思表示はその効力を生ずるに由ないものといわなければならない。

二次に予備的請求について判断する。

本件店舗にかかる控訴人と被控訴人との間の賃貸借の期間が中野簡易裁判所で成立した訴訟上の和解によつて昭和四八年九月一日から満六か年間とされたことは前説示のとおりであるところ、控訴人が被控訴人に対し、昭和五四年三月七日、更新拒絶の申入れをしたことは当事者間に争いがない。しかしながら、建物賃貸借の更新拒絶は、期間満了前六か月ないし一年内にすることを要するところ、右更新拒絶の申入れは、僅かではあるが期間満了前六か月に足りない時期にされたものであり、したがつて、これによつては、右賃貸借は終了せず、期間満了に伴い右賃貸借は法定更新され、その後は、期間の定めがないものとなつたというべきである。そして、右更新拒絶の申入れの趣旨及びこれがされた時期に照らせば、右更新拒絶の申入れには、右のようにして期間の定めのないものとなつた賃貸借についての解約申入れの趣旨が含まれているとみるのが相当である。

そこで、右解約申入れについて、これがされた昭和五四年三月七日から六か月後の同年九月六日までの間に正当の事由が存したかどうかについて検討する。

〈証拠〉によれば、控訴人はもと東京消防庁に長らく勤務したのち、昭和四五年に定年退職し、その後、倉庫の管理人等の仕事に就いたこともあるが、これも辞め現在は無職であること、控訴人の三男貞男は百貨店の食料品部に勤務しているところ、控訴人は予てからいずれ貞男を独立させ、同人と一緒に食料品販売を目的とする店を開きたいとの希望を持つており、控訴人が被控訴人に対し本件店舗の明渡しを求めるのもこれを実現するためであること、しかし、その計画は未だ具体化しているわけではなく、貞男も依然として百貨店に勤務していること、控訴人は、本件店舗のある建物(源九ビル)の一階の他の店舗部分(二店舗)及び二階を賃貸しており、ほかにも賃貸している土地があつて、相当の賃料収入を得ていること、が認められる。これによれば、本件店舗の明渡しを受けられるのかどうか、その時期はいつになるのか等、重要な点について不確定な要因のある現段階において、控訴人の前記計画が具体化していないのは止むを得ないことであるとしても、その実現はあくまで控訴人や貞男の希望を満たすだけのものであつて、控訴人の本件店舗を使用する必要性は右の程度のものに止まり、その生活維持のため欠くことができないほど強いものでないことは明らかである。

他方、被控訴人は自らここで八百屋の営業を行なうために本件店舗を賃借したものの、本訴が提起された昭和五四年一〇月一七日当時においては、右営業を行なつていたのは鉄美夫婦であつて、被控訴人は店にもほとんど姿を見せなくなつていたことは前認定のとおりであり、これらの事実からすると、右のような状態は前記更新拒絶の意思表示がされた同年三月七日以前から続いていたと推認することができる。このような点からすれば、賃借人である被控訴人自身にとつては最早本件店舗を使用する必要性はないものというべきであり、〈証拠〉中には、本件店舗での八百屋の営業は被控訴人が鉄美と共同で行なつており、収益も配分しているとか、被控訴人において鉄美から定期に所定の金員の提供を受けていて、これが被控訴人の生活を支えている旨の供述部分があるが、右供述部分は、他の証拠による裏付けに乏しく、前認定の事実関係に照らしたやすく措信しがたい。

もつとも、前認定の事実に、〈証拠〉を合せると、鉄美は、既に長年月にわたり本件店舗で行なつている八百屋の営業から挙がる収益で自己とその家族の生活を維持しており、本件店舗を明け渡すことになれば、八百屋の廃業を余儀なくされ、その生活基盤に多大な影響を受けることが明らかであり、これからすれば、鉄美にとつて本件店舗を使用することの必要性は控訴人のそれを優に超えるものであるということができる。しかしながら、鉄美は控訴人との関係では本件店舗の賃借人ではないのであり、そこで、問題は控訴人の前記解約申入れに正当の事由があるかどうかを判断するに当り、賃借人でない鉄美の右のような事情を斟酌すべきかどうかということである。

ところで、建物の賃貸借において解約申入れにつき借家法第一条ノ二所定の正当の事由があるかどうかを判断するに当つては、賃貸人側の事情と賃借人側の事情とを比較考量してこれを決すべきものであるが、問題の建物を賃借人以外の第三者が使用している場合、右判断に際し、賃借人側の事情として右第三者のもとにある事情をも斟酌することが許されることがあるのは、転貸借について承諾を与えるなど賃貸人が賃借人において第三者に建物を使用させることを事前に容認しているとか、実質上賃借人と第三者とを同一視でき、あるいは賃借人において第三者に建物を使用させることが止むを得ない事情によるものであつて、このことが賃貸人との間の信頼関係を破壊するまでに至らないなど、特段の事情が存する場合に限られ、そのような事情がない場合には、賃借人側の事情として第三者のもとにある事情を斟酌することは許されないと解するのが相当である。これを本件についてみるに、鉄美が前認定のような経緯でここで行なわれる八百屋の営業のために本件店舗を使用するに至つたことは、賃借人たる被控訴人において賃貸人たる控訴人との間の信頼関係を破壊するに足りないものであることは既に述べたとおりである。しかしながら、前認定の事実によれば、控訴人は、もともと、鉄美に対して好意的感情を持つておらず、少くとも中野簡易裁判所において訴訟上の和解が成立した時点では鉄美に本件店舗を使用させる意思のないことを明確にしていたのであるから、控訴人の方から進んで鉄美による本件店舗の使用を容認することのなかつたことは明らかである。また、本件店舗での八百屋の営業は、鉄美の収支計算のもとに行なわれ、これについて被控訴人の支配が及んでいない以上、鉄美による右営業のための本件店舗の使用を目して被控訴人によるそれと同一視することはできない。そして、さらに、被控訴人において鉄美に本件店舗を使用させるに至つたのは、ここで八百屋の営業を続けることについて被控訴人にその意欲が欠けていたためであることは前認定のとおりである。してみると、鉄美が本件店舗を使用するについて前認定のような事情があるからといつて、控訴人の前記解約申入れに正当の事由があるかどうかを判断するに際し、鉄美のもとにある前記事情を斟酌することは許されないというべきである。

そうすると、賃貸人である控訴人側の本件店舗にかかる自己使用の必要性が前述した程度のものであるにしても、賃借人側には自らこれを使用する必要性が存在しないのであり、これに前認定にかかる本件における諸般の事情及び当審における鑑定人小谷茂の鑑定の結果を総合するときは、昭和五四年九月六日の時点において、控訴人が金五九〇万円を提供するときは、右解約申入れは正当の事由を具備するとみるのが相当である。

したがつて、控訴人と被控訴人との間の本件店舗にかかる賃貸借は、控訴人からの解約申入れにより昭和五四年九月六日限りで終了したというべきであるから、被控訴人は、控訴人から金五九〇万円の支払いを受けるのと引き換えに、本件店舗を明け渡し、同月七日から右明渡しずみまでその賃料に相当する使用損害金を支払うべきであるところ、当審における鑑定人小谷茂の鑑定の結果によれば、右賃料相当額は、右同日現在では一か月金九万四、〇〇〇円、昭和五七年三月一日現在では一か月金一一万二、〇〇〇円であることが認められる。

三よつて、控訴人の主位的請求は理由がないから、これを棄却し、予備的講求は右説示の限度で理由があるから、その範囲でこれを認容し、その余を棄却すべきであり、これと一部結論を異にする原判決は変更することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九六条、第八九条、第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(岡垣學 磯部喬 大塚一郎)

物件目録〈省略〉

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